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第19話 「ふりかえるべからず」 PART.1

 

ワシが中学の時に住んでいた広島のマンションは、友人達の間で「出る」と
噂されている所だった。
と、いっても広島市内ではそんなに珍しくなかったかもしれない。
原爆で一度にたくさんの人が亡くなった過去があるからだろうか、
広島にはいたる所で「ここは出る」と囁かれる所があった気がする。

 

ともあれそんなマンションに住んでいた14才、10月中旬のある日。

両親が仕事で2日間鳥取へ行ってしまい、一人家で留守番する事になった。
遊び盛りのワシは早速バンド仲間のMチンを呼び、夜を徹して遊びまくる事にした。
と言ってもなんせ14才の小僧なもんで、酒やタバコや女遊びをするワケでもなく、
ジュースやアイスを買い込み、夜通しバンドの夢を語り明かす、
というカワイイもんだった。

二人が熱く未来を語り合っていたAM2時30分頃だっただろうか、突然

 

「ゴト‥‥ゴト‥‥ゴト‥‥」

 

外の通路をこっちへ向かって来る重たい靴音が。
固いゴム底のような独特な音。
靴音は我が家を目指してまっすぐ向かってきている‥‥気がする。

ワシの家は4階建てマンションの4階、階段からは一番奥。
「こんな時間に誰が?‥‥」熱い小僧二人は一瞬で不安に静まりかえる。
歩調と靴の音から「大人」だという事だけは察せられた。
ゆっくりと近づいてくる靴音に、顔を見合わせ固まったままの二人。

 

「ゴト‥‥ゴト‥‥ゴト‥‥」

‥‥来る!

 

二人はキッチンの窓に目をやった。
それは流し台とガスコンロの前、通路側にあるスリガラスの窓で、大人でいえば
胸の高さくらいに位置している。
玄関に来るにはその前を通り過ぎなくてはならない。
すりガラスにシルエットが映ればどんなヤツかくらい分かるだろう。

 

「ゴト‥‥ゴト‥‥ゴト‥‥ゴト‥‥」来た!

 

!!!!!

 

二人は驚愕した。
今まさにキッチンの窓の前を歩いている「その男」のシルエットが、
「頭のてっぺん」くらいしか見えないのだ。
身長100cmそこそこ、て事?

そして、家の玄関の前でその靴音はピタリと止まった‥‥
重たい靴音、大きな歩幅、そして身長100cm、深夜2時半‥‥

Mチンとワシは身動き一つできずに、
玄関の前に立ち続ける得体の知れない気配に恐怖した。

 

「‥‥‥‥」

 

5分くらいジッとしていただろうか、やがて靴音の主は再び
「ゴト‥‥ゴト‥‥ゴト‥‥」と、もと来た道を、頭のてっぺんだけ見せながら
ゆっくりと戻って行き、そのまま音は闇へと消えて聞こえなくなった。
「ダーッ!!」と二人、力が抜け、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

 

落ち着きを取り戻してからソ~っと玄関を開けて外を覗いてみたが、当然、何一つ
痕跡が残ってるワケでもなく、彼がいったい何者だったのか、何も分からないまま
夜は明けた。

「りゅうたの家で出た!!」
翌日学校で、MチンはTやKに昨夜の出来事を事細かにまくしたてていた。

身を乗り出すように聞いていたTもKも、あまりの恐怖に
ちん○まがグリーンピース大に縮まった、とか。

                             PART.2へつづく

 

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