第18話「ジャンケンでズルをするべからず」
中学2年のある朝、学校の朝礼で突然校長が言い出した。
「今から皆さんでジャンケン大会をしましょう」
‥‥ナゼ?‥‥
よっぽど話す事がないらしい。んならすなよ、朝礼なんか。
「まず一番最初に皆さんと私とでジャンケンをしましょう。で私に負けた人はそのまま
座ってください。勝った人は立ったまま一番近くにいる人とジャンケンしてください。
そうして負けた人から座ってってください。最後に立っていた人が優勝です。
いきますよ〜。」
皆心に疑問は抱きつつも、言われるままに校長とジャンケンをする。
周りを見回せば、なんだか「ワル」と呼ばれている連中まで素直に校長の
「ジャ〜ンケ〜ン」のリズムに合わせて手を揺らしている。
ピュアじゃのお前ら。と思いつつ同じくコブシを揺らすワシ。
「ポンッ!」
校長、パー。ワシ、グー。あ‥‥
「ハイッ!グーを出した人はそのまま座ってくださーい!」
あ、ちょっと待って今のは。今のはナシね。
一発で負けた悔しさと、少しは人の目を引きたい気持ちから、ワシは生徒達が
ガヤガヤザワザワと座ったりしゃべったりしてる中で、何食わぬ顔で立ち残っていた。
「ハイッ!じゃぁ立っている人は一番近くの人としてください。いきますよ〜、
ジャーンケーンポンッ!」
ワシは近くに立っていた女子と対戦した。
女子、チョキ。ワシ、グー。
ワッハッハ!どや、見たか!ワシの実力。
そうじゃ、さっきのはちょっと調子が悪かっただけじゃ。
勢いづいたワシはそのまま2連勝。
フハハハ!鬼でも新倉イワオでもかかって来いやぁ!
「ハイ、じゃ負けた人は座ってくださーい。」
バタバタと負けた奴が座った瞬間、ワシはハッとした。
立ち残ってるヤツが妙に少ないのだ。
‥‥ひょっとして、ワシ、今目立ってる?‥‥
イ、イヤ!ちょっとで!ちょっとでエエのよ目立つのは!
次は!次こそは負けねば!
少なくなった生き残りの対戦相手はすでに10メートル越しだ。
周囲数十人の生徒の視線が降り注いでいる。もう嘘も何も通用しない。
「ジャーンケーンポーン!」
ワシ、チョキ。相手、パー。
パー?お前パーかい!?パーなんて出す奴があるか!このパー野郎!!
‥‥8人‥‥
生き残りたった8人の中に生き残ってしまった‥‥
それにしても減り方が早くないか?
誰かズルして勝ったのに座ったヤツがおるじゃろ!(←負けて立ってた奴)
アガリ症だった当時のワシは8人に降り注ぐ全校生徒の視線にブルった。
おしっこモレそ‥‥
「ジャーンケーンポーン!」
あ‥‥また勝っ‥‥
‥‥4人‥‥
およそ1100人の全校生徒が息を飲んで見つめる中4人で向かえた準決勝。
(ワシはグー出すグー出すグー出す‥‥お前パー出せパー出せパー出せ‥)
相手の目にひたすら念を送る。
「ジャーンケーンポーン!」
ワシ、グー。相手、チョキ。
ま、負けた、いや勝った‥‥
勝って「負けた」ようなこの失望感のカオス。
オーマイガもう許してファッキュざけんなヘルプミ冗談じゃないガッデムお母さーん‥‥
コロす!殺すどウルァ!そのチョキでち○こ切り落としたろかコルァ!
‥‥2人‥‥神さま‥‥
めまいで意識が薄れそうになる中、ワシは幼い日々を思い出していた。
母さん、僕は小さい頃から目立たないおとなしい子でしたよね‥‥
僕は今1100人が見守る中、見知らぬ人とたった2人でジャンケンします。
お元気ですか?‥‥あ、帰ったら会えるのか。
そして最後の決勝戦。もう勝っても負けても目立ち過ぎるほど目立っている。
えーい、ここまできたら優勝してやらぁ!!(ヤケクソ)
「いきますよ〜〜、ジャーンケーンポーン!」
ワシ、チョキ。相手グー。
あ‥‥
「ハイ!(ワシの相手に)あなたが優勝!おめでとうー!
じゃ、以上!朝礼を終わります。一同キリッ!レッ!」
‥‥‥え?
皆が礼をしてザワザワと教室に帰って行く中、ワシは一人、指をチョキにしたまま
ボーゼンと立ち尽くしていた。ヒュウゥゥ(風)
終わり?さんざんサラシ者になったあげく最後負けて2位というハンパな存在に
辱めておいて「おめでとうー」でオワリ?
冷や汗ビッショリでパンツまで少しウッティーなのに「じゃ、以上!」で終わり?
ウフフ、校長‥‥殺っちゃっていいかな?
こうして「ズルして目立ってハンパだった」という生涯ぬぐえぬトラウマを
背負ったワシだった。
つづく |