第16話「オカマに逆らうべからず」
西武新宿駅で恐いモノを見た。
ひと組のカップルが電車から降りてきたのだが、どうも妙だ。
男はごく普通の男。女と腕を組んでいる。いや、組んでいると言うより、
ガシッと捕まえられているといったカンジ。
その女。ものすごくガッシリした体格、ガニ股。
太平サブローシローの太い方に酷似したその顔にはコッテリ厚化粧、そして青いアゴ。
サラサラの金髪ヘアーをなびかせてプリプリ怒っている。
「ざけんな!コルァ!今○○さんを呼ぶから待てやオルァ!」←女のセリフ
こえぇ。
どうやら察するに電車の中で男が彼女(?)の事をバカにするようなことを
言ってしまったらしい。もちろんカップルではなかったようだ。
イカン。イカンよ、
オカマさんを怒らせてはイカン。
いつの頃からか、ワシはオカマさんに恐怖するようになっている。
ワシの中でオカマさんにはある法則があるのだ。
法則その1「オカマさんはケンカが強い」
ワシが入った男子高には付属中学があったのだが、その付属中から高校へ上がって
きたヤツには「ホモが多い」と聞いていた。
全寮制のそこでは、毎夜先輩が後輩に「お口でご奉仕」させ、中にはそのまま
「つながっちゃった」りした奴もいたらしい。
たしかに付属中出身のO君(色グロ、毛深い、まゆ毛太い、鼻の穴大きい、
ガッチリ筋肉質)というクラスメートが、キャピキャピはしゃぎながら、男どうしで
手をつないで階段を昇る、13日の金曜日とアルマゲドンが一度にやって来たような
場面をワシも見た。
ある日、そのO君に大声で怒鳴ってるやつがいた。
「ビーバップハイスクールの読み過ぎで高校デビューしちゃいました」てなカンジの
ワル気取りのEだ。
O君「アンタ!さっきから何よ!」
E 「オメーのそのしゃべり方がキモチ悪い、つっとんじゃコラ!」
O君「いいでしょ!ほっといてよ!」
E 「ブッ殺すどコラァ!ちょっと屋上来いやぁ!」
屋上へ行く二人の後をみんなでゾロゾロついて行って見学。
EとO君は20〜30cmの至近距離でお互いニラミ合っている。
そしてEがO君の胸ぐらをつかんだその瞬間、
「スパーーーン!」
さわやかな音の後、Eは後頭部を押さえながらその場にバッタリと倒れ
ピクピクと痙攣していた。
一瞬みんな何が起こったか分からなかった。
なんとO君、胸をつかまれ向き合ってる相手の後頭部へ垂直蹴り。
「田原俊彦キック」ちゅうの?スゲェ!
聞けばO君は少林寺拳法の有段者だそうな。あわれEよ。
「格闘技?ウフフ、スッゴク好き」
「格闘技=男同士でカラミ合う=楽しい」O君の中ではこういう図式に
なって
いるのだろう。そらケンカも強ぇはずだ。
その後O君は柔道部に入部。
O君「寝技をやってみたくて」
こえぇ。
法則その2「オカマさんは豹変する」
上京したワシは知り合いに「オモロイとこ連れてったる」と言われ、新宿2丁目の
ゲイバーへと行く。
まだ時間が早かったせいか、中には一人の客もいなかった。
「アラァ〜ンHちゃん(ワシの連れ)ごぶさたじゃな〜いン!
アラ?こちら(ワシ)お友達?」
阿部寛ふうの若いにいちゃんがクネクネと近付いてきた。
「ヤダァ(ワシをさして)こちらの彼すっごくママ好み!ちょっと待ってネ
今ママを呼ぶから。ママ〜!ママ〜ン!」
カウンターの奥から、加納典明にソックリな、色グロで熊みたいにごっつい
オジさんが出てきた。
「ハ〜〜イ」
・・・・・ママ?・・・・・
「ほらァ!ママァ!来て来て!ママのタイプのはずよン」
「ヤ〜ン!Hちゃんのお連れさん、ちょーアタシ好み〜」
早く、死んだフリ死んだフリ!
「連れて帰っちゃおっかな〜♡」
く、食われる!
「いやぁ、まぁ、ははは‥‥」お茶を濁しつつタバコをくわえようとすると
「イヤ〜ン、それはアタシのし・ご・と」
典明ママは毛むくじゃらの手でタバコをくわえて火をつけ、
そして「グチュグチュグチュグチュ」と口の中にツバをためると、
それをタップリとタバコの吸い口につけて「ハイ」とワシの口元へ持ってきた。
いるか!ンなもん!
「あ、やっぱタバコいらない‥‥」ブルンブルンと首を振るワシ。
「ヤ〜ン吸って〜ン。アタシのつけたタバコじゃ吸ってくれないの〜ン?」
「う、うん、吸わない‥‥」
その瞬間。
ガシッとゴツい手でワシの頭を押さえ
「吸え、つってんだゴルァ!」
怒鳴りながらワシの口に「だ液たっぷりタバコ」を押し込んだ。
ヌ、ヌルヌルしてるぅ‥‥
「キャー!吸った吸った〜ン!もう二人は深い仲」
ワシの腿よりも太い腕をカラませてはしゃぐママ。
そんな「ママという名の熊」のオモチャと化したワシを、誰にも救う事など出来ないまま
2丁目の夜は更けた。
こえぇ。
法則その3「オカマさんはツボをつく」
こないだ新宿で飲んだ帰り、ビラを配っているニューハーフにつかまった。
「ウチのお店に来て来て〜」
「は、はぁ。じゃぁ、まぁ、そのウチ」
そう答えると、彼女はオカマさん独特の太くてカン高い声で叫んだ。
「いつでも来やがれ〜〜ン」
その「来やがれ〜〜ン」が妙にツボにハマり、
ちょっと行ってみたくなったりしたワシだ。
オモロそうだなぁ。。。
‥‥ハマりそうでこえぇ。
つづく |