第14話「小僧の手を疑うべからず」
こないだ行った回転寿司屋は大ヒットだった。
カウンターにはねじりハチマキの威勢のいいあんちゃんたちが数名、慣れた
手つきでバンバン寿司を握ってバンバン流している。
月曜というド平日なうえ、夕方5時半という早さもあって、客はワシ以外は
2~3人しかいないのに、ずいぶん景気よく流してるもんだ。
そんな中、カウンターに流れてこないネタの注文をしようと、
「すいません、ゲソとシャコとトリ貝」と言うと、あんちゃんは奥に向かい
「あいよ!ゲソ、シャコ、トリ貝いっちょう!!!」と威勢よく伝える。
そう言われた奥の若者、これがワシの「最近出会ったイケてる男ベスト5」
に入る大ヒットの青年だった。
色白ポッチャリ、ホッペは赤く、腫れぼったいまぶた、どんくさそうな仕草。
青年といってもまだあどけなく、ヘタすると10代の見習い少年かもしれない若さだ。
「あ‥‥あいよ‥‥」
もうね「目」が。
目がオドオド。口モゴモゴ。
注文を受けるや、とりあえず右手にシャコを持つ彼。
あ、イヤやっぱ左手に持ち替え‥‥あ、でもやっぱ右手に‥‥やっぱ置く。
「左手でシャリをつかみジッと眺め、ちょっと多かったかナー、と戻し、
あ、いけね、少なくなっちゃった、と右手でシャリつけ足し」×3
おもむろに握り始める。
「ギュッギュッ」握る。「ギュッギュッ」握る。
握る‥‥握る‥‥(1分経過)‥‥握る‥‥さらに握る
‥‥コラーッ!!いつまで握っとるんじゃ!
時々指をソ~っと開いて中身を確認。
シャリ、何て呼ぶのか知らんがあの「握力鍛えグッズ」みたい、
グリップの形くっきり。こ、こらあぁぁ(涙目)
どうやら見習い少年、指先に飯粒がつくのが職人魂を傷つけるらしく、
指を開くたびに丹念にひと粒ひと粒取り除いている。ええから早よ握れ!
ようやくシャコをのせ(すでに3分は経過!)また、握る握る握る握る‥‥
やっと皿に載せ、満足したのかと思いきや、まだ握りに不安の残るらしい彼は
皿に載せた寿司を上から「ギュ~!」と押し、ちょっとつぶれたソレを、
今度は両横から「ギュ~!」前後から「ギュ!ギュ!」と押す。
なんというか「砂場で山を作ってる感じ」に近い。
揺れるのを恐れるかのように、皿を持った彼は慎重にゆっくりと歩いて来て
オドオドとしながらワシにソ~っと差し出した。
「シ‥‥シャコ‥お‥おまち」
触れれば壊れてしまいそうな、そんな「ヴァージン」のような寿司。
箸でソッと触れてみた。
こわれた。
アメリカの「ダイナマイトでビル解体」みたいにバラバラー!と壊れた。
不安げにチラチラこちらをうかがう少年。
かわいそうなので何くわぬ顔でササッとかき集めパクッと口へ。
な、生あったか~い‥‥
こ、これは「シャリが炊きたて」だからだろうか?それとも見習い少年の
「人肌の温もり」なのだろうか?答えを知りたくないワシだったりする。
たぶん彼はホントにホントの見習いで、客のいない夕方の時間帯に、
それもメインのコンベアーの仕事ではなく別注文のみの担当で少しづつ
仕事に慣らしていこうという店側の考えであそこに立ってたんだと思う。
でもあまりに少年がオモシロイのでその後何回も何回もコンベアーに流れて
ないものを注文したワシ。おかげで楽しくお腹いっぱいになりました。
でも今思えばちょっぴり気掛かりが。
どうか神さま、
小僧がちん○んをいぢった後しっかりと手を洗っていますように。
いや、信じよう。
生きていくために。
つづく |