第1話 「パンクスは男子校に入るべからず」
中学3年の時、文化祭でギターを弾いたらちびっとモテた。
ワシの人生が輝いた瞬間だ。
バレンタインに下級生の子からでっかい手作りのチョコケーキをもらったりなんかして、
そのケーキの上には白いチョコで「先輩と同じ高校に行きます」なんて書いてあったりして、
もはや「女体の神秘」との遭遇もカウントダウンか、と思われた。
受験した公立高校は余裕だとふんでいた。
試験日には最後の追い込みをする同級生たちをよそに、校門や体育館裏などをチェック。
フムフム、ここで告白なんかしたりして、学校裏のあの喫茶店あたりで待ち合わせたりして
一緒に下校したりして彼女の家に寄ってみたりなんかしちゃったりしてー。
ナニ?Aカップを揉め?…あ「英文を読め」か。
え?パンティーを剥ぎ取れ?…あ「漢字を書き取れ」か。
全然違うし。
落ちました、はい。スベりました、ええ。
とりあえずスベリ留めに受けてた私立は受かった。よかった。イヤよくない。
1クラス40人、1学年15クラス、ザっと600人。×3学年。男。
1800人、男。
「24の瞳」どころか、1800本の竿。3600個の玉。
多すぎだ、いくらなんでも。
入学式、体育館の入口で一人ひとり何か袋を渡される。
開けてみると中から数珠が。
‥‥ジュズ?‥‥
『ゴィ〜〜〜ンンンン』
突然の鐘の音にハッとステージを見ると幕がサッと開いて
そこにはド〜ンとデッカイお釈迦様が。
そうだ、仏教高だったんだ‥‥
男子校で仏教高校‥‥ 臭い。イカくさすぎる。
金ピカの釈迦像を見ながら、フト頭をバレンタインのチョコがよぎった。
「先輩と同じ高校に行きます」
来てみーや、来れるもんなら‥‥
男子校での生活は、おして知るべし、ここで説明するまでもない。最悪だった。
まず仲良くなったのは、同じ中学出身のグリグリリーゼント頭のHだった。
ワシはというと、その頃ハードコアが好きだったのもあって「天まで届け」と
言わんばかりのトゲトゲツンツン「どパンクヘアー」
そんな二人が一緒にいたのが目立ってしまったのだろうか、しばらくすると、
「ワシャぁ、ワルじゃけぇのぅ」といわんばかりの先輩方がワシのクラスの前を
ウロつきはじめた。
そしてワシと一緒にいたHを「おうコラ、待て」とつかまえた。
ビビるH。
「じ、じゃ、先に行くネ」そそくさとその場を立ち去ろうとするワシ。
「ワレ!お前もじゃコラ!」
アラやだ、アタシも?
「お前らイカした頭しとるのぅ」ウフ、そう?
「一年坊がンな頭してどーなるか分かっとんか?」はて、どーなるんでしょう。
「今日放課後、屋上に来いや。逃げたら殺すど!」ヒェー!
「ワル」「放課後」「屋上」ときたら、この後くるのは当然「リリアン」でも
なければ「リップサービス」でもないだろう。どう考えても「リンチ」だ。
いや「リップサービス」よりはいいか。
「ワシ、学校やめる‥‥」ポソリとH。いや待て、まだ入学一週間だ。早過ぎ。
「まぁ痛い思いはするじゃろうけど、なにも殺されるワケじゃないじゃろ」
なんとかHをなだめて覚悟を決め、放課後二人でいざ屋上へ。
そこには10人くらいの「ビーバップハイスクール」な人々が、なぜか空手着を着て
ズラっとウンコ座り。
「オウ、よう逃げずに来たのう」アンタ自分が「逃げたら殺す」つーといて。
「じゃ、これに着替えて」ポンっと空手着。
へっ?
「君ら今日から空手部ね。うれしい?」
へっ?
「いいえ」と言いかけ、慌てて「ハイ」て言い直そうとし「ウッ」と詰まって
「いはぅっ」という不明な言語をはくワシ。
よく分からんまま強制的に空手部に入部。ギタリストなのに。
おまけに「お前ら名前ナニよ?」と聞かれ
「Hです」「りゅうたです」と告げると
「あ〜〜覚えらんねぇ。(Hに)お前グリグリ頭だから『グリ』な。
んで(ワシに)お前は‥‥あ〜〜『チ○ポ』でいいや」
なんで!?なんでチ○ポ!?
練習はまあ簡単に言えば「サンドバッグになる事」だった。殴られ役だ。単に。
毎日ボロボロになりながらHと二人で帰った。
あぁ、男女共学、体育館裏、告白、二人で登下校、彼女の家、乳‥あ、いや‥‥
淡い夢だったよなぁ。
男子校、仏教、イカ臭、空手部、シゴキ、男、イカ臭、竿、玉、イカ臭‥‥
これが現実なんだなぁ。
「ワシ、こんど生まれ変わったらリーゼントやめる」ポツリとH。
イヤ生まれ変わらんでもやめれるじゃろ。
ワシも思った。今度生まれ変わってもパンクスにはなるが男子校には行かない!
「人間サンドバッグ」の生活は2ヶ月続いた。
2ヶ月後、空手部のワル先輩たちは事件を起こして全員退学処分となった。
Hと朝まで打ち上げをしたのは言うまでもない。
心残りはただ一つ、奴らは最後までワシを「チ○ポ」と呼んだ事だけだ。
つづく |